2022年5月29日に開催された「第28回えびすだいこく100kmマラソン」に参加してきました。
結果は、、、
なんとか完走!!
これもお決まり文句かもしれませんが(笑)
過去に出たウルトラの中で
この大会が最も過酷な大会でした!
いや、マジでキツい大会だったと思いますよ。
公式発表の完走率
49.8%!
半分はDNFなので、たぶん頑張ったと思います。我ながら(笑)
毎年この時期はサロマ湖100kmウルトラマラソンに向けて調整する時期ですが、サロマは3年連続で2022年も中止。えびすだいこく100kmは初参加です。
ここでは、えびすだいこく100kmマラソンの完走記とコースの特徴、スタートやゴール後の帰り方などをまとめます。
長くなりますが、ぜひ最後までお付き合いください。
えびすだいこく100kmとは?
えびすだいこく100kmマラソンは、えびす様を祀る美保神社から、だいこく様を祀る出雲大社までを走る100kmマラソンです。
島根半島を東から西へ、峠を超え、海外沿いを走る自然豊かな大会で、1994年から続いている歴史ある大会です。
そしてなんと!個人の部で10回完走を遂げると「えびす・だいこくの神様」と称して永久ゼッケンが授与され、崇め奉られるとのこと!
神になれるなんて、日本広しといえどもこの大会くらいじゃないw?
神様になりたい~!!
えびすだいこく100kmの完走率
2012年から2022年までの過去10年の完走率です。
※2020年、2021年は中止
開催年 | 完走率 |
---|---|
2012年 | 67.5% |
2013年 | 62.1% |
2014年 | 65.4% |
2015年 | 75.3% |
2016年 | 81.2% |
2017年 | 67.6% |
2018年 | 58.7% |
2019年 | 68.9% |
2022年 | 49.8% |
例年は70%前後の完走率ですが、2022年は49.8%!完走率からも2022年の過酷さがわかりますね。
えびすだいこく100kmのコース
- 前半はアップダウンの繰り返し
- 後半は平坦が続く
というコースです。
コース攻略について
美保神社をスタートして5kmくらいは海岸線を走り、そこからは峠越え。日本海に出てからも基本的にはアップダウンの繰り返しです。42km過ぎからの島根原子力発電所の裏を越える坂道が前半の難所。前半はほどんど坂道くらいの気持ちで臨みましょう。
後半も地味にアップダウンがあり、完全な平坦コースとなるのは70kmから。後半はコースの難易度よりも暑さと体の疲労度の勝負になります。前半で脚を使いすぎると後半に脚が攣って大変な思いをするので、前半は無理しすぎず余力を残すランを。
コースの景観や特徴
日本海側に抜けてからはとにかく景色が綺麗!遠く隠岐の島を眺めたり、小さな島々を眺めながらのランはウキウキします。海もめちゃ綺麗!ただ正直、途中から飽きます(笑)
51kmの大エイドを過ぎてからは佐太神社を目指して山道を走ります。70kmから国道に出るとあとは平坦なコース。左手に宍道湖を眺めるまっすぐコースで、余力があれば宍道湖の景観を楽しむことができますが、あまり変化がなく単調なコースです。日差しを遮るものがなく、日差しが照りつける日は暑さにかなり苦労します。
最後の最後は、出雲大社・神門通りの大鳥居近くの広場でゴール。鳥居を前に「たどり着いた~」という気分も盛り上がり、ゴールまでの下り道を勢いよく駆け抜けてゴールできるでしょう。
えびすだいこく100kmの会場
スタート地点は美保神社。島根半島の東に位置します。
ゴール地点は出雲大社です。
スタート地点の会場は美保関文化交流館。建物が選手の更衣室・待機場所になっていて、ここで時間を調整できます。
会場までの行き方
会場までは松江市内の2箇所から送迎バスが3:20頃に出ます。
- 松江市役所前
- JR松江駅南口
①松江しんじ湖温泉付近に宿をとった人は松江市役所前、②JR松江駅付近に宿を取った人はJR松江駅南口が近いです。
どちらも選手を十分に乗せるバスが用意されます。ちゃんと座れるので焦って集合とかしなくても大丈夫そうです。
どちらの乗り口から乗るかはエントリー時に指定するのですが、どちらにするかは次の章の「帰り方」も参考に決めてみてください。
えびすだいこく100kmの帰り方
ゴールの出雲大社から松江市内に帰るには、ほとんどが「一畑電車」を使って帰ると思います。マラソン参加者なら当日は運賃が無料です。
ゴール地点の広場から最寄りの「出雲大社前駅」までは歩いてすぐなので、ゴール後のふらふらな足取りでも大丈夫です(笑)
時間帯にもよりますが、100km完走した人たちが帰る時間帯はほぼランナーさんしかいません。終電(20:39発)ならゆっくりゆとりを持って座れました。
問題は「電車に乗っている時間」と「松江しんじ湖温泉駅に着いてから」
- 松江しんじ湖温泉駅まで1時間も電車に乗り続ける
- しんじ湖温泉駅からJR松江駅付近まで結構歩く
松江市まで電車で1時間以上かかります。ヘトヘトの状態だと1時間電車に乗るのも大変なので、最後まで頑張りが必要。
あと、JR松江駅付近に宿をとった人は、松江しんじ湖駅についてから結構歩きます。えびすだいこく100kmマラソンは帰るまでがウルトラです(笑)
えびすだいこく100kmのスタート時間
2022年はコロナ禍対策もありウェーブスタートでした。
B組:5:20スタート、19:20までゴール
C組:5:30スタート、19:30までゴール
組分けはタイムではなくゼッケン番号順です。100km参加人数をざっくり三等分したみたいです。
ゼッケン順ですが、どうも「入金順」になってるみたいです。お仲間さんと一緒にスタートしたければ、事前に運営に連絡すると融通してくれるみたいですよ。
ここまで、えびすだいこく100kmマラソンの基本情報でした。2022年の内容なので細かい部分は開催年の運営に確認してみてください。
えびすだいこく100kmマラソンの対策
今回の100kmマラソンでは、2つの課題をもって臨みました。
- 暑さ対策
- お腹対策
暑さ対策
今回のえびすだいこく100kmマラソン、最高気温の予報は29℃。天気も終始晴れで、気温の高さと日差しが最大の敵です。暑さに弱い虚弱ランナーである僕は、暑さと日差し対策として以下の2つを意識しました。
- クールタオルをこまめに濡らす
- 水分補給を積極的にする
熱中症の日差し対策はまず首を守ること。日差しが強くなる中盤以降は、給水所などでこまめにクールタオルを濡らして、それを首に巻きつけて走ります。
あとは水分補給です。
僕は日頃から意識しないと水分をあまりとらないので、給水所では積極的に水分を補給することにします。
お腹対策
ここ数回のウルトラマラソンで悩まされるのがお腹グルグル問題。
中盤以降にお腹がグルグルと張り出して、走るのが窮屈になり何度もトイレに寄ることになってします。
ここ数回のウルトラでは、胃腸に負担をかけないようにするために、ジェルなどを多用して固形物は極力避けてきたのですが、逆にそれがお腹グルグルの原因になっていたのかもしれません。
「固形物(おにぎり、パン、バナナなど)をしっかり食べると、気持ち悪さもなくなった」という、他ランナーさんの情報もあります。
胃腸が弱いという根本的にどうすることもできない体質もあると思いますが「固形物を積極的に食べる」という課題も今回の大会では意識します。
第28回えびすだいこく100kmのスタート前
前日はJR松江駅近くのホテル泊。ホテルに到着して気が付いたけど、2019年の国宝松江城マラソンでも泊まったホテルだった(笑)
前日の夜はお腹のことを考えてホテル前のセブンの親子丼。あとはポテトサラダ、コールスローサラダなどおつまみ系を。
21時くらいにベッドに入るが案の定あまり眠れず。夜中に「糖分を摂取すれば寝られるかも!?」と思ってシュークリームを食べるけど効果なし。
途中ウトウトしながら、起きる1時間前くらいに少し寝入ったくらい。
寝れなかったのは仕方ない。切り替えて予定どおり午前1時過ぎに起床。シャワーを浴びて朝食を食べながら、荷物などを用意。
- おにぎり1個
- おいなりさん2個
- しじみの味噌汁
- ゆで卵1個
- オレンジジュース
おいなりさんが大きかったのでこれで結構お腹いっぱいに。
午前3時過ぎにホテルを出てバス停へ。周りはランナーさんがちらほらと。
「みんなこれから大変な1日を過ごすのね」
とか考えながらバスに乗り込む。
スタート地点の美保神社までは約40分のバス移動。寝て行こうかなっと思ったけどやっぱりあまり寝れなかった。周りの人は結構寝てた。
スタート地点付近の大会本部(美保関文化交流館)に到着。すぐに健康チェックシートの提出とワクチン接種証明書のチェック。
ほどなくして知り合いのランナーさんと合流。今回は5人のお仲間さん(Nさん、Sさん、Tさん、Oさん)がいますが、TさんOさんとはスタート前には会えず。
3人で気合いのシューズ円陣!
アミノバイタルゼリー・パンなどを食べて、トイレを済ませて5時前くらいに荷物を預ける。最後のC組スタートなので、この頃には控室も空いてました。
5時10分のA組スタートが間近なのでスタート地点へ。
スタートは美保神社の鳥居から。スタート前に神社の神主さんのご祈祷があったり松江市長さんからの挨拶があったり(松江市長さん見た目若くて、後で調べたら超エリート!当日も10km走るってパワフルな方ですね)MCのつなぎ方も良かった。
5時10分、A組スタート!
A組ランナーさんを沿道で見送るときにTさんOさんを発見!
「ゴールで会いましょう!」
って言われたけど、果たして僕がゴールまでたどり着けるかどうか・・
5時20分、B組スタート!
B組ランナーさんが全員スタートした後に鳥居下へ。
美保神社でパチリ。よく撮れてるのでお気に入り。
スタートまで緊張しながら待ちます。
第28回えびすだいこく100km全行程の振り返り
午前5時30分、えびすだいこく100kmスタート!
3年ぶりの100kmマラソン。
ここから長く厳しい1日が始まります。
想定以上のアップダウンを繰り返す序盤
スタート後5kmくらいは海岸線の平坦コースを進む。
早朝なのに車の往来が激しく(ほとんどが大会関係者?)車に気を遣いながらのラン。気候は暑くなく寒くなく「このくらいの気温が最後までずっと続けばいいのに」と思いながら走る。
5km過ぎから海岸線を離れ山道へ。
ここから前半はアップダウンの繰り返し。
初めてのコースなので、どの程度の坂道かわからなかったのだが、緩かったり急だったりのアップダウンを延々と繰り返す。平坦の区間もあるのだが、基本坂道。厳しいというよりもウンザリするといった感じ。
最初は「坂道は積極的に歩いて脚を温存」なんて言ってたけど、行けども行けども坂なので、ペースを緩めながらも坂道もほとんど走った。偉い!
10km通過は1:07:25。坂道を考慮すれば順調なタイム。
海の景色が美しくて最高!
序盤はこの景色もあり、楽しみながら走ることができる。
20km通過は2:14:36。
キロ6分半ペースで順調に進む。
ここまで暑さも気にならず快適なラン。
21km過ぎのエイド(笠浦集会所前)で初めてのトイレ休憩。
シューズを脱いで入る建物だったので、自然とタイムロス。でも適度な休憩になりマラニック気分で楽しい。
エイドにおにぎりとバナナがあったので両方食べる。おにぎりはコンビニにあるようなちゃんとしたサイズが丸々1個。美味しい。
エイドを過ぎてしばらく走っていると、、
体に異変が。
「あれ?何か気持ち悪い・・・」
さきほど食べたおにぎりが重くのしかかり、なんとなく気持ち悪い感じ。吐き気がするとかではないけど、ここから固形物の給食に少し怯んでしまう。
少し気持ち悪い感じになったものの、順調にランを進める。坂道では歩くランナーさんも多かったけど、ゆっくりコツコツと走る。こういったコツコツ走る貯金が終盤の苦しい局面で助けになるのを過去のウルトラの経験で知っている。
30km通過。3:27:11。
いいペースで進んでいるが、繰り返すアップダウンがいい加減ウンザリしてきた。足裏もダル痛くなってくる。Nさんと話しながら「足裏がダルくなるのは重度の扁平足だから」という結論になった(笑)
素晴らしい景色も少々飽き気味。
山の木陰の影響で暑さはまだ気にならないけど、じわじわとボディーブローのように響いてきてるのは間違いない。
35km地点のエイド「マリンゲートしまね」でトイレ休憩。運良くスムーズに終わらすことができて、お腹もここまで順調。
しばらく順調に走り39km地点のエイド「御津漁港駐車場」で長めの休憩。足裏がダルいのでシューズを脱いで足裏をマッサージ。ここでの休憩が10分くらい。休憩は長めだけどペースがいいので貯金は十分にできている。問題なし。
中盤で早くも限界!?日差しと暑さに苦しむ
40km通過。4:49:23。
細かい計算はできないけど、全然余裕のタイム。
ただ、この辺りから日差しと暑さが苦になり始める。
時刻は午前10時半。
そろそろ暑さが本格化する時間帯だ。
42km地点から始まる島根原子力発電所裏の片句の山越え。あとから難所だと知ったが、走ってる時はそれほどでもない。「そういえば長い坂道あったなー」くらい。というか、ここまでの数々のアップダウンの繰り返しで、何がどの坂だかよくわからなくなっている。
ただ、この頃から坂道のペースでNさんに遅れをとり始める。走力が、というわけではなく、暑さでペースが上げられない感じ。
少しずつ口数が少なくなり、息も荒くなってくる。
片句の山越え中間地点(44km)での給水。いつもより多めに5杯飲む(スポドリ、スポドリ、コーラ、水、水)暑さで喉がカラカラだったので、多めに水分補給作戦。
結果、これが裏目に。
ほどなくして気持ち悪くなる。
ここから「水分は補給したいけど、飲むと気持ち悪くなる」というジレンマとの戦いになる。
山を越えて大エイド「鹿島文化ホール」まであと5km。
この辺から少しずつ息遣いが苦しくなり変な声が出始める。
「ヒッ、ヒッ、ヒッ」
と自分で聞いても苦しそうな声。
でも出さずにはいられない。
なりふり構っていたらウルトラは完走できないのだ。
そう自分に言い聞かせる。
なんとか50km地点通過。5:59:33。
ちょうど6時間くらい。
残り半分の距離であと8時間ある。
時間はまだまだ十分。
ほどなくして51km地点の大エイド「鹿島文化ホール」に到着。
スタート時に預けた荷物を受け取り、ホール前の日陰に座る。
暑さがしんどいが、脚はまだ大丈夫っぽい。
- 給水(経口補水液)
- レッドブル補給(冷えてない)
- アミノバイタルゼリー補給
- マグオン、メイタンCCCを補充
- フェイスシートで顔を拭く
- 日焼け止めクリーム塗り直し
休憩時間を長めにとったので、モバイルバッテリーで少しでもスマホを充電。前半、訳あってスマホのバッテリーをかなり消耗したからだ。
結局、大エイドでは20分くらい休憩して出発する。
休憩したことで少しリフレッシュできたが、相変わらず照りつける日差しと暑さが厳しい。すぐにまた息遣いが荒くなる。
ここからの20km、とにかく暑さがしんどかった。
日差しを遮るものが少なく、どんどん体力が奪われる。
ペースが上がらない。
声もどんどん大きくなる。
「ヒィッ、ヒィッ、ヒィッ!」
このあたりになると全く喋る余裕なし。
Nさんの問いかけにも無反応。
聞いてはいるのだが、答えられない。
この1ヶ月、できるだけ昼間に走って暑さ対策してきたのに、やっぱり元々の暑さの弱さ、体の弱さはどうにもならないのだと実感。
走るのは止めなかったので、まだ走力的な余力はある。歩いてるランナーさんを何人も抜かしたのもこの区間だ。
とはいえ、苦しそうな声は変わらず。
すれ違うランナーさん全員がこう思ったはず。
「コイツ、絶対に完走は無理だな・・・」
そう思われても仕方ない。
そのときの顔がこれである。
さらにもう1枚アップの表情。
人間、苦しいと「顔がゆがむ」と言うが、文字通り顔がゆがんでいる。苦悶の表情だ。このブログを書いている今見ても、自分で自分が可哀想になるくらいの苦しそうな表情。
こんな苦しい表情で、周りの誰もが「もうコイツだめだ」と思っている中で、僕自身は諦めてなかったし、望みはまだあった。
それは、3年前のサロマ湖100kmの経験があったから。
3年前のサロマ湖100kmも暑さにやられ、途中で3回も嘔吐し、それでも完走した。苦しんだサロマを完走できたのは、夕方になり涼しくなって、暑さの苦しみが少し和らいだから。
今回も「夕方になれば少しは回復する。ここが正念場、ここを我慢して踏ん張れば絶対にいける!」と思って走っていた。
とはいえ、
これである。
苦しいランに変わりはない。
61km。佐太神社のエイド
これが最後の写真となる。
これ以降は写真を撮る余裕もなし。
佐太神社で初めて頭から水をかぶる。
暑さと体の火照りがやばい。
ビショビショになるが仕方なし。
かぶり水で少し回復。
ペースは上がらないが走り始める。
ここからはまた日差し照りつける農道を走る。
ペースはキロ6分半から7分くらいに徐々に落ちていく。
Nさんも遅いペースに合わせるのがだんだんとしんどそうになってきた。
67kmのエイド。花冠の里駐車場。
ここでA組スタートのTさんと会う。
20分先に出発したTさんと会うということは、ペースは悪くない。貯金はできている・・・のだが、厳しさはTさんの比ではない。Tさんが話しかけてくれるのだが、まともに返答ができない。
制限時間までまだ5時間半以上あり、時間的には全然余裕なのだが、体調的には余裕と言ってられない。貯金はいくらあってもいいくらい。
67kmエイドを出発して走り始めるが、次第にNさんが離れては歩き、離れては歩きになり、ペーサーがしんどそうだ。
胃腸が完全停止!足攣りと全身疲労との戦い
70km手前。8:46:55。
僕のペースに合わせるのが大変そうだったNさんに「先に行っていいよ」の合図。人にペースを合わせるのは神経使うし、疲れてくる局面だと体力も奪われる。
このままだと最悪2人ともリタイアになりかねないと判断して先に行ってもらうことに。ここまで引っ張ってくれただけでも感謝、感謝。
GOがかかったNさん。速い速い!
70km走ってきた時点でのペースアップじゃないだろ(笑)
宍道湖沿いの国道に入り平坦な一直線のコース。みるみる小さくなるNさんの姿に「やっぱり凄いランナーだ」という思いと「さて、ここから正念場だ」という思いで気を引き締める。
と、気持ちを締めて進みだした途端!
左脚の太もも裏が攣り始める!
ついに足攣りがきたか。
ごまかしながら走れるかな?と様子をみながら走るけど、ピキッッと攣ってしまい走れない。立ち止まって太もも裏を伸ばすストレッチをしても治まらない。
日差しはジリジリと照りつけて体力をどんどん奪っていく。
このままでは走れないと判断して、飲食店の脇の砂利のところに倒れ込むように座る。すぐに太もも裏を入念にマッサージ。
足攣りが始まるとしばらくはペースアップして走ることはできない。いや、そもそも体力的にペースアップは無理。体調が苦しい中での足攣りへの気遣い。それがあと30kmも続くと思ったときに「こんなところでこの状態で、完走できるのか・・・?」と、このレース初めて弱気になる。
足攣りを注意しながらのランなのでペースは一気にキロ7分30秒台へ。
それでも、このウルトラマラソンはキロ8分以上で走っても貯金ができる。まだ貯金を作りながら走れてると自分を言い聞かせる。
キロ7分半に落としたのに、
今度は右太もも前と左太もも前が攣り始める。
いきなり両太ももの攣りだ。
こちらは坂道で使ったからだろう。
止まって両太ももをマッサージ。
マッサージしている間はタイムをロスする。
足攣りに気を遣いながら
そんな状態で数キロ走った頃に
今度はお腹のハリとゴロゴロ感が発生!
ここ数回のウルトラはこのお腹のハリとゴロゴロにいつも悩まされる。51kmから固形物を食べなかったツケか?固形物を食べてもこの結果になったのか?それとも水分のとり過ぎか?今回またしても答え合わせはできなかったけど、とにかくお腹が苦しい。
立て続けのトラブル。
さすがに心が折れそうになる。
相変わらずの気持ち悪さ。
暑さによる体力低下。
足攣りの危険。
お腹のハリの苦しさ。
加えて、51kmのエイドから固形物を取ってないことによるエネルギー切れがいつおきてもおかしくない状態。
満身創痍。
これであと25kmかぁ。。。
75km。津ノ森駅のエイド。
ここでTさんとOさんに会う。
疲労困憊でろくに会話もできなかったが、知ってる顔があるだけでホッとして少し安心する。頑張ろう!って気持ちになる。
椅子に腰掛けて5分休憩。
攣った太ももを入念にマッサージ。
トイレに行きたかったが埋まっていたのでここでのトイレはパス。再び走り出す。
それにしても暑さがひどい。すぐに喉が渇く。15時だからまだまだ暑い時間帯か。せめてこの暑ささえ弱まれば・・・
途中、Tさんが後ろに着いてきたのがわかっていたが、会話したり応える余裕が全くなし。「Tさん、ごめん。。。」っと思いながらも、自分の走りを維持するので精一杯。
喉の乾きがひどいので自販機を探すもどこにもなし。お腹もグルグルして鬱陶しい。こういう時、初めての大会は次のエイドまでの距離がわからないのでツラい。
80kmエイドに到着。
10:07:33。
喉はカラカラ。
水分を補給したいのだが、水を見ただけで気持ち悪くなる。とはいえ、飲まないわけにはいかないのでスポドリ、水などを飲んでトイレへ。トイレに行ってる間にTさんは先に行ったらしい。
トイレから出てきて倒れるように地面に座り込み、シューズを脱いで足裏をマッサージ。倒れるように座り込んだから、エイドのボランティアの人から「大丈夫ですか?」と声をかけられる。
もちろん、大丈夫ではない。大丈夫ではないのだが、大丈夫ではなくても走り続けなければいけないのがウルトラだ。
80km地点、サロマ湖100kmでいえばワッカ原生に入る前のエイドと同じ位置だ。
「しっかり休憩して残り20kmを走り切る!
そのために時間をかけて休憩しよう!」
結局このエイドでは15分くらい休憩。
メイタンCCCを無理やり流し込み、再び歩き出す。
ただひたすら、前へ、前へ
80kmエイドをふらふらと歩き出すが、走る気力が全く湧かない。信号を渡ってからも走ることができない。歩いてるだけなのに息遣いはハァハァと荒く、さっきエイドで水分を補給したばかりなのに喉が渇く。
吐き出すほどの気持ち悪さ。
先ほど飲んだメイタンの影響か?
全身が火照るように暑く苦しい。
そして、目眩。
「これは、、、アカン・・・」
「やめるか・・・」
たぶん熱中症っぽくなってたのかもしれないが、過去最高の体調の悪さにリタイアが頭をよぎる。
残り時間は3時間半。
あと20kmで3時間半だからキロ9分ちょいでも間に合う。
ここで1kmだけ歩いてみる。
歩きで全部いけるのか?
キロ11分30秒。アウト。
間に合わない。
完走するためにはやっぱり走るしかない。
そうか、、走るしかないのか。。
でも体が動かない、走り出せない。
もう一度水が飲みたい。。。
自販機は、、、無いのか・・・
あるはずのない自販機を求めながらふらふらと歩いていると、ふと目の前に水道の蛇口が!
道路沿いにある小さなお墓の脇にある水道。
歩道から手の届く位置にある。
たぶん、飲料用ではない水。
少し葛藤があったが、完走がすべて。
なりふり構ってられない。
とにかく今できることをやるしかない!
墓場の水道の水を飲む。
喉の乾きは補えたので、ここからまた走り出す。
全身疲労とエネルギー不足で全然ペースが上がらない。
傍から見たら、とても走っているようには見えないだろう。
ペタペタと這うようなブザマな姿で走る。
でもこれが、今できる自分の精一杯。
時折くる吐き気を我慢しながら進む。
83km地点。キロ8分31秒。
大丈夫、このペースなら大丈夫。
自分に言い聞かせながら
ここはひたすら我慢の区間。
歩道を歩く近所の子ども。
自転車で通り過ぎる高校生。
隣りの車道を走る車。
出雲の日常の中に
苦悶の顔で走るランナー。
なぜかこの辺から鼻水が出るようになり
ハンドタオルで拭う。
抜くってもしばらくするとまた出てくる。
ハンドタオルをポケットに仕舞うのも億劫になってきたので、ハンドタオルを握りしめながら走る。
途中でランナーさんに声をかけられる。
『あれ?一緒に走ってた方は?』
いきなり声をかけれら一瞬戸惑ったがすぐに理解。
「ペースが違いすぎるので先に行ってもらいました~」
『そう、頑張って完走しましょう』
たしかに、
ここでリタイアしたら、先に行ったNさんに気を遣わせてしまうだろう。
大丈夫、
虚弱で走力もないが、
根性はわりとある。
と思う。たぶん。
85km地点のエイド。
ここで5分休む。
細かい時間計算はできなかったが、前半の貯金もあるし、たぶん5分なら大丈夫。
とはいえ、この後どんなアクシデントがあるかわからない。
喉が乾いて水分をとりたいのだが、水分をとると気持ち悪くなる。でもまあ、吐いても仕方ないと思ってスポーツドリンクやコーラを飲む。
5分休憩した後、またペタペタと走り出す。
80kmからの区間は信号待ちが結構あり、止まるたびにタイムロスしていることに焦る。走りを止めて再び走り出すのもツラい。信号で止まるたびに縁石に座り込む。
お腹のグルグルが苦しかったので途中のローソンでトイレを借りる。
そろそろ17時になるがあまり暑さは弱まらない。むしろ西日が直接差し込んできて厳しい。夕方になれば涼しくなってペースアップできると思ったけど、サロマの再現ならず・・・
80kmからの厳しい区間を乗り越え、
なんとか90km地点のエイドへ。
12:06:28。
残り10kmで2時間弱。余裕は生まれたけど、歩きでは間に合わない時間。足攣りなどのアクシデントもいつ起こるかわからない。
ここでは立ち止まることなくすぐに出発。
脇道を抜けて、最後の直線。
残り8km。
ここでようやく完走を確信!
「現時点でキロ8分ペースで走れているから、あと64分、1時間苦しめばゴールできるんだ!」
そう思いながら慎重に進む。
この直線の向こうに出雲大社がある。
長い長い道のり。
「苦しみながら出雲大社を目指すとか、徳を積みながら天竺を目指す三蔵法師みたいだな」などとどうでもいいことを考えながら走るが、大丈夫。意識はハッキリしている。
それにしても全然進まない。
いつもならなんてことはない8km。
その8kmがこの上なく長い。
しばらく走って時計を確認するけど、150mしか進んでない。ビックリする。感覚としては500mくらいは進んでるのに。
直線で先が見えるだけに
果てしなく遠い。
前に見えるランナーさんも辛そうだ。
みんな辛い局面。
時計を見る。
300mしか進んでない。
次はもうちょい我慢して時計を見よう。
この繰り返しで進む。
95km地点、最終エイド。
最後に水とコーラをもらう。
次に足を止めるのはゴールした後だ。
日が長い季節とはいえ、夕暮れで少し暗くなってくる。
サングラスが見えにくくなったので外す。
「ゴールしたとき目元が見えた方がいいよね」
とか考える。
余裕じゃん。
残り3kmで、ついに距離表示もカウントダウンに。
歩道の段差で躓かないように注意して走る。
残り2km。
道路標識にも「出雲大社 2km」の表記が。
いよいよ近づいてきたが、出雲大社感が全然ない(笑)
普通の道路。
2年半前の松江城マラソンの時に行ったのに全然覚えてないw
左手に島根ワイナリー。
ここは覚えている。前回行き損ねたから。
そしてついに残り1km!
佐太神社から一切写真を撮ってなかったから、せめて最後くらいは。
ペタペタと進んでいくと目の前に坂道が!
え?あそこ上るの?
でも神社っぽいからあそこがゴールか!
ペースはもちろん上げられないけどやる気はでる。
ついに出雲大社へ。
ここまで長かったけど、出雲大社を拝めて良かった。
ようやくたどり着いたぜ!
ゴールは道路を渡り、坂を下った先の広場。
最後の信号待ちをしている間に5,6人ランナーが集まる。
「ゴールはゆっくり独り占めしたいな」と思い、坂道で一気にペースを上げる。誰もついてこない。四万十川ウルトラの時もそうだったけど、最後、めっちゃ速く走れるじゃん!と自分でも驚く。
カーブを曲がり、広場ゴールの最後の直線へ。
ゼッケン番号と名前を呼んでくれる。
ふとゴール方面を見ると、(当然)先にゴールしているNさんが待っててくれた。
「なんとか帰ってこれたよ」
と言ったかどうかは覚えてないが、
最後はゆっくり歩いてゴール!!!
我ながらよく完走できたな。
今回は達成感よりも、安堵。
えびす様からだいこく様をつなぐ
長い長い旅路が終わった。
第28回えびすだいこく100kmのゴール後
ゴール後はすぐに完走証を受け取る。
おおっ、13時間半切れたか。
19時前にゴールできた。
途中の僕を見た人は
まさか完走できたとは思うまい(笑)
これだからね。
ゴール地点でかき氷を作ってくれたのでレモン味を注文。2,3口食べるがやっぱり気持ちが悪い。
荷物を受け取るが、とにかく立てない、動けない。
頑張れば帰りの終電1本前の19:44には間に合いそうだが、とにかく体が動かないのでちょっと無理。もう少し休憩が必要。
吐き気がひどいのでトイレへ。
嘔吐するが何も出ない。
胃液すらでない。
まあ当然か。
でも少しスッキリしたので、更衣室へ。
しんどいが、ボディーシートで体を拭く。
脇下が擦れて痛いが、そのくらい。
目立った外傷はなく、足の爪も大丈夫そうだ。
着替えてシューズを履く時に腹筋が攣る。
疲労が強いとやりがちなのだが油断した。
5分くらいその場で悶絶。
しばらく外で休憩。
日も落ち、19時半が過ぎ、ゴール会場の撤収作業が始まる。
ようやく少し動けるようになったので一畑電車の出雲大社前駅へ。真っ暗な出雲大社の大通りは雰囲気がある。が、浸る余裕はない。
20時前に駅に着く。
ランナーさんがたくさんいるが、終電だからだろうか?それほど混んではいない。ベンチに座り20:39発を待つ。しんどい。
乗車の時間になり改札でゼッケンを提示するのだが、バッグから出す気力がない。ボロボロの状態を見れば一目瞭然だろう。通してくれた。
電車に乗り椅子に座る。
「混んでて椅子に座れなかったら、俺は地べたに座るぞ!」と意気込んで持ってきたビニールシートは使わなくてよさそうだ。
やっと帰れる。。。
が、この帰りの電車が長い!
駅の数にすると21駅。
途中で乗り換えもあり、
1時間以上電車に揺られ、
落ち着いた吐き気復活。
終盤は吐き気との戦い。
まだウルトラやってるよ。
「ホテルに帰るまでがウルトラです!」
とか考えながら気を紛らす。
しんどい。
松江しんじ湖駅に到着。
気持ち悪かったのでトイレへ。
とにかく胃腸が不安定だ。
松江しんじ湖駅から、JR松江駅まで。
タクシーとか無さそうなので
夜道をトボトボと歩く。
夜風はぬるい。
今振り返ると、このトボトボもいい思い出なのだが、そのときはとにかく早くホテルに着きたかった。
30分以上かけてホテル前のセブンに到着。
うどんなら食べられそうなので買う。
22時半過ぎ、ホテル着。
無料で夜鳴きラーメンが食べれることを思い出す。部屋までテイクアウトしたいのだが、厨房の人が梱包にもたつく。早くしてぇ~。
部屋に着き、荷物を放り投げ一息。
少し休んでから夜鳴きラーメンをゆっくりすする。
ゆっくりと、一口一口よく噛んで食べる。
しょっぱいスープが染みる。美味しい。
ラーメンを食べたらちょっと元気が出たので
ゴミなどを片付けつつシャワーへ。
1日の汗と疲れを流す。
いつも足が棒のようになるのだが、
今回は平気。
4月5月の走り込みがよかったのかな?
少し荷物を片付けて、1時くらいに就寝。1時に起床してからちょうど24時間後。
第28回えびすだいこく100kmはこうして終了。
長い長い1日が終わった。
第28回えびすだいこく100kmのまとめ
えびすだいこく100kmへの参加を決めた時、苦しい戦いになることは覚悟してました。季節的に暑さとの戦いになると思ったからです。
5月末日といえば、日によっては暑くなる日もあります。そして、今回はまさにドンピシャで暑い日にあたり、完走率は49.8%。参加人数が増えてからのえびだい100kmの中で、歴代ワーストの完走率です。
過去イチ苦しんだ100kmでしたが、それでもこの低い完走率の中で完走できたことは僕にとっては大きな自信になりました。
一方で、中盤まで引っ張ってもらえなかったら果たして完走できただろうか?という思いもあります。暑い中盤にかなり助かりました。
また、新たな課題もできました。
- もう少し固形物を食べ方がよかったのか?それとも食べていたらもっと気持ち悪くなっただろうか?終盤のお腹のハリはどうだっただろう?という課題
- 前々日からの睡眠不足(前日はほとんど寝てない)が、体調不良を早めたり酷くさせたので、睡眠コントロールの課題
睡眠については、1週間前くらいからは、できるだけウルトラ当日の時間帯に合うように、超早寝・超早起きを実践してみようかな、と思います。
走ってる最中も、走り終わった後も「もうウルトラは引退。こんな苦しい大会は絶対でないよ」と思っていたのに、日が経つにつれて辛さはどんどん忘れていきます。もう何度も経験していることですが(笑)
終わってみれば、えびだい100km楽しかった!
また出たいかも!
どうせなら10回完走して神様目指すか!?
これが今の気持ちです。
コロナ禍になって初めてのえびすだいこく100kmマラソン。主催者、ボランティアの方々、関係するすべての人に感謝です。難しい運営の中で、無事100km走らせてもらえました。
そして暑い中、完走目指して走った全てのランナーさんに、ナイスチャレンジでした!と伝えたいです。